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【現地レポート】大会第1日:信頼が生んだラストショット

 本日から「令和元年度 全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会」が始まった。メインアリーナとなるサンアリーナせんだいで行われた男子のオープニングゲームのひとつ、北陸(福井) 対市立船橋(千葉) は、戦前の予想どおり、残り1分を切っても2点差という緊迫したゲームとなった。
 その試合に終止符を打ったのは北陸⑤高橋颯太である。けっして調子はよくなかった。試合後にそう話す高橋が3ポイントシュートを沈めて、粘る市立船橋を振り切ったのである。
「自分が『決めた!』という気持ちはありません。あのときは完全にフリーになっていたし、気持ちよく打つことだけを考えていました」
 そこには今大会の指揮を任された重野善紀アシスタントコーチのアドバイスがあったと高橋は認める。
 前半から市立船橋の厳しいマークにストレスを溜めていた高橋に対し、重野アシスタントコーチはハーフタイムに気持ちよく打つよう促したのである。
 高橋は言う。
「重野先生も北陸のシューターとして活躍した方で、シューターとしてはあこがれの存在でもあるんです。1年生のときから何かシュートで行き詰まると重野先生に『どうすればいいですか?』と聞いてきて、そのたびに的確なアドバイスをしてくれます。そこで重野先生が言ったことをすれば、たいていそのとおりになるんです」


 この日の北陸は高橋だけでなく、全員が市立船橋の厳しいディフェンスに苦しめられていた。いつもなら犯さないようなミスも犯し、なかなかペースをつかめずにいた。そんなゲームをつなぎ、流れを作っていたのは下級生たちだった。
 重野アシスタントコーチも「3年生にはもっと頑張ってもらいたいし、もっと使いたいんです。でもインターハイは勝負の場でもあるので、それに徹して、今日は3年生に我慢してもらいました」と試合後に語っている。
 それでも高橋には「3年生だぞ。最後はお前だぞ!」と告げてもいたそうだ。
 その高橋が勝負を決定づける3ポイントシュートを決めたのである。
 3年生の意地と、それを信じて、彼の力を引き出したアシスタントコーチの信頼関係。奇しくも2人が勝因として語る「チーム一丸」には、選手だけでも、コーチだけでもない、文字どおりの一体感があった。

 北陸は明日、同じ北信越ブロックの東海大学付属諏訪と対戦する。
 今シーズンは一度も勝っていない相手だが、重野アシスタントコーチはこう言っている。
「戦い方によっては何が起こるかわかりません。チャレンジしていきますが、もちろん、やっつけてやるという気持ちも持って戦います」
 この言葉も、そのとおりになるか――明日のゲームも見逃せない。

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