MENU

【現地レポート】大会3日目:経験がエースとチームを高みに導く

「令和元年度 全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会」は大会3日目。ベスト8をかけた男女の3回戦がおこなわれた。

 男子の広島皆実 (広島) は実践学園 (東京) を 98-78 で破り、2年ぶりのインターハイ・ベスト8入りを果たした。 3ポイントシュート4本を含む37得点をあげたエースの⑧三谷桂司朗は、試合後にこう振り返っている。
「昨日の試合でキャプテン (④阿部優月) がケガをして、この試合に出られなくなったんです。彼を試合に出すためにも今日の試合は勝たなければいけなかったんです。彼の分まで皆実のプライドを持って思いきりプレーしました」
 むろんキャプテンであり、司令塔でもある阿部を失った代償は三谷自身にも降りかかった。ゲームキャプテンに任じられたことで「どうまとめたらいいんだろう?」と、いつもなら考えなくてもよいことを考えてしまったため、ゲームの序盤は「戸惑いながらプレーしていました」と認める。
 しかし、下級生たちが勢いのあるプレーでチームを盛り上げていくと、三谷もいつもの三谷に戻っていった。実践学園のエース⑦江原信太朗との点の取り合いにも真っ向から挑み、上回っていったのである。
「チームメイトも、藤井 (貴康) コーチも 『桂司朗がウチのエースなんだ!』と言ってくれて、チームが苦しいときに助けられるのがエースだ、なんとしてもシュートを決めようと思うようになりました。江原くんとのマッチアップでは、彼を止められませんでしたけど、ワクワクしながらプレーできていました」

 エース同士の真っ向勝負を楽しめるまでに成長したのは、三谷がアンダーカテゴリーの日本代表や、今シーズンも 3×3 U23 日本代表として国際大会でプレーした経験が大きい。インターハイ予選の2週間後におこなわれたネーションズリーグ・ロシア大会にも三谷は出場している。そこでは地元ロシアを破る経験もしている。
 広島皆実を率いる藤井コーチも「本人が行きたいというので、『スキルをあげてこい』と言って送り出しました」と言う。そのための強化合宿にも送り出し、三谷は B リーグの選手たちと寝食を共にすることで自分をより高めたいという気持ちを強固なものにした。そしてそれをチームに持ち帰ることで、チームのスタンダードも引き上げたのである。
 三谷は国際大会の経験について、こう話す。
「自信を持ってシュートを打ち切ることを学びました。それまではパスをすべきか、シュートか迷いながら打っていたから入らなかったんです。でも 3×3 日本代表の長谷川誠アソシエートコーチから『開いたら打て!』と言われて、打とうと決めたときはどんな体勢からでも打とうと思うようになりました。それが今日の試合にも出たと思います」
 三谷の国際経験は大会だけに留まらず、NBA プレーヤーとも対談している。ゴールデンステイト・ウォリアーズのステファン・カリーである。そのカリーに「プレッシャーに打ち勝つためにはどうしたらよいか?」と聞くと、カリーは「そこに至るまでのプロセスをいかに楽しむかだよ。朝食や練習などを普段から大切にするんだ。たとえ緊張しても自分がやってきたことは間違いないと信じてやりきるんだ」と言ったそうだ。
 阿部の不在に戸惑った三谷だったが、下級生の勢いを見て、自分がやってきたことも間違いはないとギアを入れ換えたわけである。
 数々の経験が三谷を強くして、今日の勝利にも結び付いている。

 そんな国際的な経験とともに、三谷の胸中に色濃く残るのは2年前のインターハイだと言う。当時1年生の三谷が福島で経験したそれが、今でも三谷のインターハイで戦うベースになっている。
「2年生のときは U18 アジアン選手権に出させてもらったので、インターハイには出られませんでした。だから今大会には思い入れがあるんです。でも勝敗はもちろんのこと、楽しむことを忘れずにプレーしたいです」
 一昨年の福島インターハイでは準々決勝で福岡第一 (福岡) に敗れている。明日の相手は報徳学園 (兵庫) だが、2年前のもうひとつ先の舞台を見てみたい。そこからはどんな風景が見られるのか――。
「ビビったらそこで負け。挑戦者として、けっして受け身にならず、皆実のモットーである『堅守速攻』をどんどん出していきたいです」
 挑戦を楽しみながら、2年前のチームを越えることでチームも、三谷自身もそのスタンダードをさらに引き上げることができる。

page top