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【現地レポート】大会5日目:高い壁をひとつひとつ乗り越えてゆく

「令和元年度 全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会」は大会5日目を終え、今年度の男女ファイナリストが決まった。女子は桜花学園 (愛知) と岐阜女子 (岐阜)、男子は北陸 (福井) と福岡第一 (福岡) である。

 全国大会にはいくつもの壁がある、と言われる。そこに出場することが第一の壁だが、その後も1回戦を勝つ壁、2回戦を勝つ壁など、それぞれの回戦に高い壁がある。北陸に敗れた報徳学園 (兵庫) はインターハイの出場こそ2年連続4回目だが、今夏、インターハイでは初のベスト4に入っている。昨年のインターハイでは3回戦で、ウインターカップではベスト8で敗れているから、いくつもの壁を一つひとつ乗り越えてきたチームといえるだろう。

 チームを率いて12年目となる田中敬コーチも「2年生が軸のチームですが、経験の少ない3年生がディフェンスで貢献したり、(㉗兵頭) 颯馬がアウトサイドから思いきり打つなど、青写真どおりというか、順調に伸びてきていると感じます」と認める。

 しかし、ベスト4からファイナルへの壁は一気に越えることのできない、もうひとつ高い壁だった。
「ディフェンスゲームに持ち込みたいと考えていましたが、思っていたよりも北陸のオフェンス力が高く、ピックに対するディフェンスもできていなかったので、想定していたディフェンスのプランを変えたら、それが選手たちに響いてしまいました」
 田中コーチはそう振り返る。
 近畿ブロック大会では、インターハイには出場していないが、全国レベルの力を持つ洛南 (京都) と準決勝で対戦をしている。しかしそのときはコンディション不良の選手も多く、インターハイで生きるような高いレベルの経験を積むことができなかった。
 しかしその失敗をそのままにしないのが今年の報徳学園の強さである。

 アリーナのなかでおこなわれるスポーツとはいえ、真夏のインターハイでは暑さとも戦わなければならない。
「今大会はコンディションのマネジメントはしました。それとインターハイはディフェンスゲームの大会だと思っているんです。細かいことももちろん大事ですが、気迫あるディフェンスや、やられない気持ち、エナジーのあるディフェンスを近畿ブロック大会以降、作ってきました」
 今日のゲームでこそエナジーのあるディフェンスをうまく発揮できなかったが、一方でコンディショニングへのマネジメントと、エナジーのあるディフェンスこそが報徳学園にベスト8の壁を乗り越えさせ、ベスト4の舞台に立たせた要因でもある。

 ウインターカップに向けた課題は明確に見つけられた。そのなかには田中コーチ自身に向けられたものもある。

 「メインコートに立つ選手の状況を見極めないといけないと感じました。経験の少ない選手をいつ出すか。たとえばスターティングメンバーとして固定している㊱本多 (健二) もメインコートに立つと思うようなプレーができていなかった。そこは私がケアしてあげるべきでした。昨年のウインターカップでの経験をそこでリセットしてしまったのですが、このチームにも引き継ぐべきでした」

 選手に経験が必要と言われるように、コーチにもいくつもの経験が必要だ。成功と失敗の経験を繰り返し積み、それを生かすことこそが、全国大会にそびえるいくつもの高い壁―― 報徳学園と田中コーチにとっては、ベスト4の壁を乗り越えるカギとなる。

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