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【現地レポート】大会第2日:実りの“冬”を迎えるための悔しい夏

「令和元年度 全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会」は2日目を迎え、男女のシード校が登場した。男子の福岡第一 (福岡) や女子の桜花学園 (愛知) が圧勝して3回戦に進む一方、男子の第1シードである桜丘 (愛知) が敗れたり、第2シードの開志国際 (新潟) がハイスコアゲームで苦しむなど白熱した2回戦がおこなわれた。

 男子第4シードの明成 (宮城) と対戦したのは、前日の1回戦で光泉 (滋賀) を破った飛龍 (静岡)。光泉との試合後、飛龍の原田裕作コーチは「(組み合わせ発表があった1か月前から) 1か月ずっと明成対策をしてきました」と明かしたが、あと一歩及ばず、71-82 で敗れた。
「(明成は) ゾーンディフェンスを敷いてくると想定して、ゾーンオフェンスの練習をしてきたんです。それがマンツーマンだったので、肩透かしをされたような……マンツーマンならチャンスもあるかなと思いましたが、やはり明成でした。マンツーマンでも190センチ前後の選手たちの寄りが速いし、ブロックにも跳んでくる。そこに対する意識を私が選手たちに向けられませんでした」
 飛龍の原田コーチはそう悔いる。
 それでも第3クォーター終了時の18点ビハインドから、第4クォーター残り3分で6点差にまで縮めたことは、今後につながる好材料とも言える。原田コーチも「縦の動きでは敵わなかったけど、横の動きでは負けていなかったと思います。特にガード陣の脚力では負けていませんでした。フィニッシュは課題ですが、ファンダメンタルでは互角に戦えていたし、(サイズの) 小ささが武器になっていたと思います」と、決して少なくない収穫も得たようだ。



 収穫は、しかし、チームを率いる原田コーチだけが得たものではない。
 この日、チームトップの22得点をあげたのは飛龍⑦中山田海渡だが、実は彼、このインターハイが初めての全国大会だった。小学校、中学校はもちろんのこと、インターハイに3年連続17回出場の飛龍に入学してからも、ベンチに入るチャンスさえ恵まれなかった。しかしそれは自身のせいだと中山田は認める。原田コーチが自主練習の重要性を説いても、それが嫌いだという理由で、ほとんど自主練習をしていなかった。「だから使われませんよね」。中山田はそう振り返る。
 しかし新チームになって最初の県新人戦の決勝戦、わずかだがゲームに出してもらったときに中山田は右足首とそのかかとをケガしてしまった。当然そこからはチーム練習にさえ出られない。その間、成長していく仲間たちの姿をコートの外から眺めていて、これではいけないと中山田は心を入れ替えた。ケガが癒えると、自らの意志でシュートを打ち続け、ドライブも実戦でのディフェンスをイメージしながら判断する自主練習に取り組んだ。それが、結果として敗れたとはいえ、ハードなディフェンスをする明成にも成果として表すことができたのである。


 3年生になって気づくのでは遅い。そう言われるかもしれない。しかし気づかないまま卒業するよりはずっといい。
「これまでは全国的なキャリアがなかったけれど、インターハイで、少しかもしれないけどキャリアを積むことができました。ウインターカップに向けて、いい経験ができたと思います」
 むろん悔しさは残る。
 しかし、時間と得点差を考えて敗戦が濃厚になったときでも、中山田は最後までチームメートにずっと声を張り続けていた。
「全部出しきれ!」
 自分ひとりの能力に頼ることなく、チーム全員で戦う姿勢を示した3年生としての自覚。それこそが22点以上の彼の成長であり、ウインターカップに向けた最も大きな収穫であった。


 

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